「えーっと、適当に屋台回って、手当たり次第に俺らの食べたいものと悠真たちに頼まれたものを買って行こうか」
上手く人混みをすり抜けながら、私たちはお店探しを始める。
柊斗は身体が大きい分、周りの人に押し潰されてしまうようなことはないが、反対に私は小柄な方であるため、人混みにのまれてしまいそうだ。
柊斗もそれを心配しているのか、少し歩く度にちらちらと私を気にしてくれていて、申し訳ないなあと思うと同時に、少しだけ嬉しいという気持ちも湧き上がってくる。
思えば、周りに数え切れないほど大勢の人はいるものの、柊斗と二人きりで行動しているということには変わりない。
そう考えれば、また少しずつ私の心は緊張し始めたのだけれど、そこはいつものごとく、平静を装うことにした。
「……あ、見つけた。ほら、あそこにフライドポテトがある」
先に目的物を見つけたのは私で、指を指しながら柊斗にその位置を告げる。
「本当だ。悠真のやつが買っていかないとうるさいからなあ。とりあえずあれからゲットするか」
「うん。悠真くん、すごく食べたそうだったしね」
「本当だよ。あいつめちゃくちゃ必死だったし」
さっきの悠真くんを思い出してしまった私たちはクスクスと笑いながら、フライドポテトの列の最後尾に並んだ。
それからもお目当ての屋台を見つけては並び、自分たちの夕飯を次々と購入していく。
フライドポテトの他に、たこ焼きや焼きそば、イカ焼きに唐揚げなど、空腹が満たされそうなものも多く買った。また、あかりが食べたいと言っていたいちご飴の列にも忘れずに向かう。
「ねぇ柊斗、これ、買いすぎじゃない?」
「うーん。……大丈夫、四人いるし、食べきれるはず」
その結果、私と柊斗の手にはいくつもの食物入りの袋がぶら下がっている。
本当に食べきれるのかな、と少し疑問は残るけど、柊斗の言う通り確かに四人いるし、そのうち二人は食べ盛りの男の子だ。それにもし食べきれなければ、誰かが自宅へ持ち帰ることもできるだろう。
何より、もう買ってしまったものは仕方ないし、祭りだからいいよね、とそう思うことにした。
そして柊斗とともに、あかりたちの待機してくれている場所を目指す。
その道中で、私はある屋台の看板を見つけた。思わず足を止めてしまい、それに気がついた柊斗が不思議そうに首を傾げる。
「……チョコバナナ」
無意識に口からこぼれたのは、屋台で売られている私の大好物。……そう、私はチョコバナナが大好きで、自宅でも自分でチョコレートを湯煎して溶かし、たまに蓮と一緒に食べているほど。
「凪、チョコバナナ好きなの?」
柊斗の問いかけに、私は食い気味に頷いた。



