直が私の手を握ると、列の後方からざわざわと声が聞こえた。


「えー!」


「あの二人付き合ってるの?」


「まじで?天野くん狙ってたのに」


などなど…。
私のところまで丸々聞こえていた。


すると、直は何を思ったのかくるりと振り返り、私を後ろから抱き締めた。


「結はやらないからな。」


そういうと満足したのか再び直は私の手を握って歩き出した。



「「「「きゃーーーーっっっ!!!!」」」」



後ろの方からは黄色い歓声が上がり、列は一時騒然した。



「もう、恥ずかしくて、私学校行くのやだ…」


「俺が学校で待ってるのに、来ないの?」


「…私のこと迎えに来るくせに」


私ははずかしくて両手で顔を覆っていると、直は私の顔を覗き込むようにして見つめてきた。


指の隙間から見ていると、直は更に顔を近づけた。


ちゅっ


「〜〜〜!!!」


なんと直は私の唇の位置であろう場所に手の上から口付けた。



その行動で私の頭はショート寸前。


更に顔を真っ赤にする羽目になった。




ようやく落ち着いてきた頃、私は気付いた。


なんとなく歩いていたが、なんだか、直が私の歩くペースに合わせているような感じがした。


「直。私歩くの遅いよね?ごめんね?」


「何言ってるの。謝る必要無いし。俺もこのくらいが楽だから。」


私が謝ると直は気にしない素振りで、前を見据えたまま答えた。