今日から新しい通学路。
中学の時とは違い、高校までの坂道は満開の桜並木が綺麗だった。
新入生達は皆、この光景に足を止め今日から始まる高校生活に胸を躍らせる。
明るい笑い声や緊張した声が辺りに響いた。
そんな中、私、明星 さやか はやや寝不足気味の目を擦り、大きな欠伸をしながら足を進める。
「あー。疲れた。眠い。だるい」
特に誰に聞かせる訳でもない独り言が口から出る。
緊張?そんなものどこかに捨ててきた。
今のさやかには高校入学よりも大事な“イベント”が待っているのだ。
「はぁー。あと一時間もあればENDまで行けたのに⋯⋯」
それは、今さやかがはまっている“乙女ゲーム”の事だ。せっかく、婚約破棄イベントが始まろうとしていたのに、時間が無くてめっちゃいい所でセーブするしかなかった。
はぁぁぁ。と思いため息が出た。
入学式なんて、さっさと終えて家に帰りたい⋯⋯。
さやかは重い足動かしとぼとぼと桜坂を登った。