そして私はそんな彼を幼馴染みとしてもつが故に女の子の敵が多い普通の女子高生。

可愛くもなく、むしろ智の可愛いさを分けて欲しい位だし、運動や勉強が特別出来る訳でもない。少し普通と違う所と言えば毎晩あの少年の夢をみる事位だろう。

「ねぇさち。僕…じゃなかった、俺と一緒に帰ろう。今日は母さんがクッキー焼くんだって」

智は昔から女顔だと言うのが酷くコンプレックスの様で、最近は一人称を僕から俺に変えようと必死だ。

そんな姿が尚更可愛いと言われる原因だと何故気付かないのか。

そしてクッキーと言う言葉に明るい笑顔を見せる智を見てつい吹き出してしまった。

「もー可愛いなぁ智は。うん良いよ、一緒に帰ろう。おばさんのクッキー私も楽しみ!」

帰る準備をする為に立ち上がった私とそう変わらない位置にあるその癖っ毛の頭を思わず弟にする様に撫でてしまう。

「止めてよ、ぼっ…俺だってもう17だよ!」

「そうだよね、17歳の男の子は繋がないよね?」

そう言いながら鞄を持たない手を見せ付ける様にワキワキと動かす。昔から智とは帰るとき何故か手を繋いで帰ると言うのが暗黙の了解だった。

「…それはまた別」