「待ってる、か」

夢の中の男の子の言葉を今度は私の言葉で繰り返す。

「さーち!一緒に帰ろう!」

「…智」

背中から掛けられた声にハッとする。いつの間に帰りのHRまで終わっていたのか、私の周りの生徒は既に何人か帰り支度を始めていた。

「どうかした、さち?ビックリした顔して」

「ああ、えっとごめん。ちょっと考え事してたから、声掛けられてビックリした」

椅子に座ったまま首だけを後ろに向ければ、キョトンとした表情の見知った顔。

色素が薄いのかフワフワの茶色の髪に同色の瞳。パッチリとした目は長い睫毛が縁どっていて、学校のマドンナと言われてもおかしくは無い。

だけどそれはこの私が智と呼んだ子が女の子だったなら、の話し。

金山 智雪。

正真正銘の男の子で私と同い年の高校2年生。私の幼馴染みとも呼べる存在だ。

その漫画に出てくる美少女キャラの様な風貌から良く電車では痴漢をされたと聞くし、女だと勘違いされて告白されたと何度相談を受けた事か。

だけど彼はいくら女顔だからと言っても男だから胸は綺麗にペッタンコだし、下に付くものが付いているのは幼稚園児だった私が確認済み。