夢の中の男の子は一度だってその顔に表情らしい表情なんてなかったのに、今はどうだろう。

ああ、なんて悲しそうな。
その瞳に涙が浮かんでいる訳でも眉を寄せて泣いてる訳でもないのに何故か私にはとても悲しそうに見えた。

例えるなら、迷子の幼子の様な。

「待ってて、行くから…必ず会いに行くから」

慰める様に堪らずそう声を掛けてしまう。男の子は夢でしか会えないのに気が付けば私の口からは「会いに行く」と言う言葉が出ていた。

少しでも近付きたくて必死に手を伸ばすけれど間の距離が縮まる事なんてなくて、段々と男の子の姿に霞が掛る。

ああ、目が覚めてしまう。

「約束!必ず会いに行くから!絶対に!」

聞こえているのか、私の声が男の子に届いているのかすら分からないのに何故、こんなにも私は必死なのだろう。ただ何故か言わなければと思った。

うっすらと霞掛る位だった男の子の輪郭さえ殆んど捉えられなくなったとき、少し高い少年の声が聞こえた気がする。

「待ってる」と。