花と黒猫の輪舞曲

次の瞬間には男の子の体は意識を失った様に大きくグラリと傾いた。

「!!」

とっさに手を伸ばせば近くに居た為に抱き止めるのは簡単に出来たけれど、私は水溜まりに落ちたから全身ずぶ濡れ。

それを思い出して慌てて体を離しソッと床に寝かせて顔を覗き込めば額に汗を浮かべ、きつく目を閉じ、眉を少し苦しげに寄せている幼い顔が視界に入った。

「!?!?」

一体何が!?
何故いきなり気を失ったのか、何故こんな苦しそうな表情なのか。一度に起こった事が多すぎてどうしたら良いのか分からない。

取り合えず床にこのままでは不味いだろうと暗い部屋の中を忙しく見渡せば、顎が外れそうになった。

「…………」

男の子に集中し過ぎて気付かなかった私もどうかと思うけれど、そこはまさに絵本に出てくる様な部屋だった。

テレビでしか見た事がないホテルのスイートルームを思わせる豪華な扉。その近くには小さなロウソクに灯りがともしてあり、その光りが数々の見た事もない様な家具を映しだしている。

中でも目を引くのは天蓋付きのベッド。見ているだけでもフカフカだと分かるクッションに柔らかそうな布団。

なんて私には場違いな所だろう。と一瞬クラリと目眩が起こった。