上層部の動きや発言によって世間からの評判や株価に影響が出るのはもちろん、本人の警護の面からも、一定の情報管理は大切なのだ。
祖父や父、そして兄の咲也の対外的なスケジュールのいくつかは社内でも非公開とされている。
「……あんなに冷たいひとが、副社長なんだ」
唇に手を当て、彩実はぼんやりとつぶやいた。
諒太は未確認の事実をまるで真実のように思い込み、冷たい言葉で彩実を責め立てた。
どこまでも晴香の肩を持ち、彩実を徹底的に非難したかと思えばいきなりキスをしてきた……。
それに、彩実が結婚したくないと言い出せば露骨に嫌な顔をしていた。
彩実には諒太がなにを考えているのかまったくわからない。
理解不能だ。
ちらりと目にした腕時計のせいで、以前たった一度だけ言葉を交わしたときの諒太を思い出して心が揺れたのも束の間、白石家に嫁ぎたいのだろうと軽蔑したような目を向けられた。
やはり思い出は思い出のままそっと胸にしまっておいたほうがよかったと、彩実は溜息を吐いた。
以前、彩実はたった一度だけ諒太と会ったことがあり、それ以来特別な思いを抱いていたのだが、見合いの日以来続く彩実への攻撃的な態度に、あのときの諒太は別人だったのではないかと思わずにはいられない。
思い返せば、あの日の彩実は体調が悪く、朦朧としていた。
前日から熱を出し、ようやくの思いで白石ホテルで開かれる大学の謝恩会に出席していたのだ。
体調が優れない中で無理をして乾杯のシャンパンを飲み、苦手で普段からあまり口にしないカルパッチョを進められるまま食べたせいで一気に体調が悪化してしまった。
宴会場の外でしゃがみ込んだ彩実を、たまたま通りかかった諒太がどこか部屋に運んで休ませてくれた。
そしてホテルに常駐している医師を呼び、診察までしてくれたのだ。
祖父や父、そして兄の咲也の対外的なスケジュールのいくつかは社内でも非公開とされている。
「……あんなに冷たいひとが、副社長なんだ」
唇に手を当て、彩実はぼんやりとつぶやいた。
諒太は未確認の事実をまるで真実のように思い込み、冷たい言葉で彩実を責め立てた。
どこまでも晴香の肩を持ち、彩実を徹底的に非難したかと思えばいきなりキスをしてきた……。
それに、彩実が結婚したくないと言い出せば露骨に嫌な顔をしていた。
彩実には諒太がなにを考えているのかまったくわからない。
理解不能だ。
ちらりと目にした腕時計のせいで、以前たった一度だけ言葉を交わしたときの諒太を思い出して心が揺れたのも束の間、白石家に嫁ぎたいのだろうと軽蔑したような目を向けられた。
やはり思い出は思い出のままそっと胸にしまっておいたほうがよかったと、彩実は溜息を吐いた。
以前、彩実はたった一度だけ諒太と会ったことがあり、それ以来特別な思いを抱いていたのだが、見合いの日以来続く彩実への攻撃的な態度に、あのときの諒太は別人だったのではないかと思わずにはいられない。
思い返せば、あの日の彩実は体調が悪く、朦朧としていた。
前日から熱を出し、ようやくの思いで白石ホテルで開かれる大学の謝恩会に出席していたのだ。
体調が優れない中で無理をして乾杯のシャンパンを飲み、苦手で普段からあまり口にしないカルパッチョを進められるまま食べたせいで一気に体調が悪化してしまった。
宴会場の外でしゃがみ込んだ彩実を、たまたま通りかかった諒太がどこか部屋に運んで休ませてくれた。
そしてホテルに常駐している医師を呼び、診察までしてくれたのだ。

