冷徹御曹司のお気に召すまま~旦那様は本当はいつだって若奥様を甘やかしたい~

それでいてまだこの感覚を味わっていたい不思議な感覚。

「彩実……」

唇の角度を変える合間に名前を呼ぶ諒太をずるいと思いながら、彩実もぎこちなくキスに応える。

肩から腕が露わなドレスは諒太の体温をじかに感じるには十分で、恋愛経験ゼロの彩実には刺激が強すぎる。

背中を撫でる動きに敏感に反応し、そのたび甘い声が口から洩れる。

その声は諒太の舌の動きをさらに激しくし、彩実はいよいよ諒太にしがみついた。

すると、諒太はくくっと笑い、彩実の顔を覗き込んだ。

満足げな笑みを浮かべたその表情は色っぽく、彩実は目が離せない。

諒太の柔らかな唇や、彼の舌の感触が気持ちよかったことに戸惑いながら、こんなときどんな顔をするのが正解なのだろうかと、ぼんやり考えていると。

諒太が再び顔を近づけ、ゆったりとした動作で彩実の唇を吸い始める。

「は……っん」

思わず漏れた声に、彩実はかっと顔が熱くなるのを感じた。

緩慢な仕草で何度か彩実の唇を刺激した諒太は、自分の体にしがみつき、視線が定まらずぼーっとしている彩実を一瞥した。

そして。

「結婚するかしないかは、俺が決める。いいな」

威圧的な口調で言い放つと、すっと彩実から離れた。

「うちの車で送らせるから、さっさと着替えて帰れ」

体中にくすぶる熱を持て余す彩実を部屋に残し、諒太は平然と部屋を出て行った。

「な、なんなの」

体から力が抜けた彩実はへなへなとその場に崩れ落ち、カーペットの上に座り込んだ。

体は熱くてたまらないが、心は氷に覆われたように冷たい。

「どうしよう……」

諒太とのキスを思い返すように唇に手を当て、困り果てる。

それからしばらくして飯島が部屋に現れるまで、彩実はなにも考えることができずじっと体を丸めていた。