冷徹御曹司のお気に召すまま~旦那様は本当はいつだって若奥様を甘やかしたい~

諒太の手の熱さに体は大きく反応し、全身の血の流れが一気に速まったような気がして落ち着かない。

おまけに早鐘のように鳴り続ける鼓動の音が次第に大きくなり、彩実はどうしていいのかわからず混乱する。

これまで男性との付き合いがゼロの彩実にとって、諒太との今の距離感は未知の世界だ。

「あ、あの……」

なにか言って納得させなければ諒太は解放してくれないと思い、彩実は口を開くが、どう答えるのが正解なのかわからず再び口を閉じた。

すると諒太の眉間のしわがいっそう深まり、彩実は困り果てる。

小関家具の商品をモデルハウスに採用するために見合いをしたのだと正直に言えば、さらに怒りを爆発させそうで言えるわけもなく。

かといってなにも言わずにこの場をしのげるほど諒太の怒りは小さくなさそうだ。

小関家具をけなされて怒った彩実のように、諒太も白石ホテルをたかだかなどと言われて傷ついたに違いない。

国内屈指の高級ホテルの経営がどれほど大変なのか、想像でしかわからないが、彩実は兄の咲也が如月ハウスの後継者としての重責を背負い、苦労している姿を見てきた。

きっと諒太も同じようにプレッシャーを感じ、そして白石ホテルを誇りに思っているのだろう。

彩実は自分の軽はずみな発言を後悔した。

晴香が諒太に嘘八百を並べ立てて同情を買っていたことへの怒りも加わって、冷静ではなかったと、肩を落とす。

「ごめんなさい。私こそ言い過ぎました。白石ホテルのことを悪く言うつもりも諒太さんを忍君と比べたわけでもないんですけど、つい」

彩実はそっと諒太と距離を取り、丁寧に頭を下げた。

相変わらず手は掴まれたままで、腰に置かれた手が動く気配もないが、諒太も落ち着いたのか、表情から鋭い怒気は消えつつある。

「……わかった。俺は別に小関の御曹司と比べられたつもりはないから誤解するな」