冷徹御曹司のお気に召すまま~旦那様は本当はいつだって若奥様を甘やかしたい~

「衣装のお直しを急ぎますので、早めにいらしてくださるとありがたいです。それと、お着がえのお手伝いにまた戻ってきますので、遠慮なく声をかけてくださいね」

飯島は、諒太の体に押し付けられたままの彩実を気遣うように目尻を下げた。

「あ……はい。わかりました。ありがとうございます」

彩実は飯島を安心させるようににっこり笑うが、本当にこのまま諒太と結婚していいものかわからない。

諒太はその思いを見抜いたのか眉をひそめ「後で飯島から連絡させるから数日中に来い」と命じた。

「飯島さん、お疲れ様。秘書課が仕切る披露宴までのスケジュールの打ち合わせを今週末にするから参加してくださいね」

それまで少し離れた場所で彩実と諒太のやり取りを見ていた三橋が、飯島に声をかけた。

彼女の存在をすっかり忘れていた彩実は、諒太の体越しに彼女に視線を向けた。

彩実を気にかけながら部屋を出ていく飯島を見送った後、三橋はつかつかと諒太の傍らにやってきた。

「諒太、いえ副社長、記事が出てしまったので、早めにマスコミに発表するべきだと思います。社長は記者会見をするならスーツを新調して今日中に散髪にいくと張り切っていて呑気すぎますし。本当、誰がリークしたのかわかりませんが、こちらにも段取りがあるのに迷惑ですよね」

あからさまに不機嫌な表情でそう言った三橋は、諒太の体に身を隠している彩実をちらりと見る。

彩実は三橋がわざと大きな声で諒太を名前で呼び捨てたように感じ、唇を引き結んだ。

三橋が諒太に好意を持っているのは明らかだ。

突然結婚の記事が出て慌てるのも仕方がないのかもしれないが、時間がない中披露宴の衣装を決めている最中にわざわざ伝えることもないだろうと、ムッとする。

「ここはもういいんですよね? だったら記者発表について打ち合わせをしましょう」