冷徹御曹司のお気に召すまま~旦那様は本当はいつだって若奥様を甘やかしたい~

「それに、一番言いたいのは私も飯島さんと同じです。もしも姉が忍君と本当に結婚するのなら、姉が心底羨ましい。たかだか世界的なホテルの後継者様よりもよっぽど幸せになれそうだし、ううん、絶対に幸せになれるはず。だから、もしも私に忍君との政略結婚の話が来たなら絶対に姉には譲らない。誰かと政略結婚しなければならなくて、その相手が忍君ならこちらからお願いしたいくらいです。でも……もしもさっきの記事が間違っていなくて姉が本当に忍君と結婚するのなら、それはそれでうれしい。だって、姉に幸せになってほしいと本当に思ってるから」

彩実はようやく言いたいことを言えてホッとしたのか、胸をなでおろした。

これで忍や小関家具を軽く考えている諒太も、少しは認識を改めてくれるだろう。

彩実は体から力が抜けるのを感じつつ、この件は家に帰ってから両親に確認しようと気持ちを切り替えた。

ひとまず早く着替えなければと、飯島を振り返った。

すると、諒太が「おい」と彩実の腕を掴んだ。

「い、いたいっ」

彩実が痛がるのもお構いなしに、諒太は彩実をぐっと引き寄せた。

サイズが合わないだけでなく、慣れないハイヒールに苦労している彩実は抵抗できず、諒太の胸に飛び込んだ。

「あの、離して」

諒太の胸を叩いて距離を取ろうとしても、諒太はそれを許さない。

彩実の腕を掴んでいた手を彼女の背中に回し、動きを制した。

「飯島、ここはもういいぞ。遅くまで悪かったな」

諒太はそう言って口元を緩めるが、目は冷ややかで笑っていない。

そして、さっさと部屋を出ろとばかりに視線でドアを指し示す。

「わかりました。副社長もお疲れ様でした」

飯島はため息交じりにそう言って頭を下げた後、彩実に向き直った。