冷徹御曹司のお気に召すまま~旦那様は本当はいつだって若奥様を甘やかしたい~

平然と言い返す彩実にさらに気を悪くしたのか、諒太は乱暴な仕草でタブレットを彩実に押し付けた。

「だったらこの記事はどういうことだ? 姉から幸せな結婚を取りあげただけでなく、本来なら自分がするはずだった結婚を姉に押し付けるなんて、最低だろう」

「副社長、落ち着いてください。如月様がおびえていま……せんね。えっと、落ち着いてらっしゃいますけど、大丈夫、ですか?」

飯島の気遣う声を耳にしながらも、彩実はタブレットの記事から目が離せず、それどころではなかった。

「どうだ。自分は国内屈指の高級ホテルの御曹司と結婚。そして姉は単なる家具職人と結婚だ。計画通りに事が運んで満足か?」

諒太のあざけるような声にも彩実は反応せず、一字一句見逃さないとでもいうように読み続ける彼女に、諒太はいら立ちを隠せない。

「おい、自分の思い通りに計画が進んでうれしいだろ。白石ホテルの社長夫人なら一生苦労せずに暮らしていけるからな。これまで姉の陰で生きて来た恨みもはらせて一石二鳥だ。このさきどうなるのか保証のない家具職人と結婚したくない気持ちもわかるが、姉に押し付けるなんて、卑怯だと思わないか」

「……よかった。忍君のことが悪く書かれてなかった」

目の前で乱暴な言葉を重ねる諒太を無視し、ひたすら記事を夢中で読んでいた彩実は、ホッと息を吐き、安心したように顔を上げた。

「あの、それってなんですか?」

飯島が彩実の手元を覗き込み、タブレットの記事に視線を落とした。

「え、『如月ハウスの美人姉妹が同時に婚約』って。あの、如月様……彩実様にはたしかお姉さまがいらっしゃいましたけど、姉妹揃ってご婚約ですか?」

飯島は慌ててタブレットを彩実の手から奪い取り、興味深げに読み始めた。