冷徹御曹司のお気に召すまま~旦那様は本当はいつだって若奥様を甘やかしたい~

「ついさっきネットで公開された記事ですが、情報元はまだわかっていません。来月の役員会でご婚約を報告してから婚約発表の予定で進めていましたが、早急に対応しなければならないと思います」

冷静な口ぶりで話す三橋の手からタブレットを取りあげた諒太は、これまでにない冷ややかな表情でつかつかと彩実のもとにやってきた。

「俺との結婚をマスコミに流したのは君か?」

「マスコミ? え、なんのことですか?」

諒太の荒々しい声に後ずさりながら彩実は首をかしげた。

「とぼけるな。いくら姉を嫌っているとしても、自分がほしいものを手に入れるためならなんだってするんだな」

広い部屋に、諒太の怒号が響いた。

これ以上ないほど顔をしかめ、怒りをこらえるように手を握りしめている。

よっぽど感情が高ぶっているのだろう、いつも冷静で彫刻のように無機質な顔が赤く染まっている。

「あ……あの?」

じりじりと彩実に詰め寄る諒太に気圧され、力なく後ずさりつつ。

彩実は色気があふれ出ている諒太の熱い立ち姿に、見とれそうになっていた。

「お姉さんが大切にしているものを取りあげて楽しいか? それほど如月家の当主の孫である晴香さんが憎いか?」

「憎いなんてそんなこと思ったことはないんですけど?」

端整な顔に怒りの感情が混じると、これほど魅力が増すのだなと、目の前にある諒太の美しすぎる顔に感心しながら答えるが、彩実はなにかがおかしいと気づいた。

「姉から取りあげるって、なんですか? それに、そもそもどうしてここに姉のことが出てくるんですか?」

今日ここに来て以来、晴香の名前が出たことはなかった。

というよりも、諒太と交わす言葉の数は絶対的に少なく、必要最低限のことを話すのみ。

まるで業務連絡に終始する上司と部下の会話のようで、そこに晴香の名前が入り込む余地などなかったのだ。