冷徹御曹司のお気に召すまま~旦那様は本当はいつだって若奥様を甘やかしたい~

「そうですねー。すみません。ちょうどお嬢様、いえいえ副社長の未来の奥様の衣装合わせも終わって、副社長もその綺麗なお姿に大満足のようなので撤収しまーす。披露宴では花嫁の極上の美しさが話題になって、マスコミを賑わすと思いますよ。次期社長夫人の華やかな美貌の秘密なんていう特集が組まれるかもしれませんね。そうなると、ホテルの宣伝にもなりますし、広報宣伝部の三橋さんも忙しくなりますよ。あ、副社長の未来の奥様のお着替えがありますので、三橋さんは出ていただけますか?」

ひと息でそう言った飯島の背中を見ながら、彩実はぽかんとする。

丁寧な言葉遣いで綺麗だの美貌だの、やけに彩実を誉めていた。

ホテルの従業員が客をいい気分にさせるのは仕事のうちだろうが、言われ慣れていない言葉に、彩実は居心地が悪くなった。

たまらず体を動かして飯島の横顔を見ると、彼女は三橋に向かってにっこりと笑っていた。

あっけらかんとした表情だが、よく見ると口元がぴくぴくと震えている。

どうやら怒りをこらえているとわかり、同じ気持ちの彩実は思わず小さな声で笑った。

その途端、諒太に寄り添うように立っていた三橋の体が大きく反応した。

顔をしかめ、悔しそうに唇をかみしめている。

明らかに飯島と三橋は仲が悪くけん制し合っているが、三橋の挑戦的な視線は彩実にも向けられている。

おまけにこれ見よがしに諒太に寄り添う姿を見れば、恋愛経験ゼロかつ鈍感な彩実でも三橋の気持ちに気づかないわけがない。

諒太を好きなのだろう。

「わ、わかりました。副社長にはまだ仕事も残っていらっしゃると思いますのですぐに失礼しますが、その前にこちらをご覧いただけますか?」

三橋は彩実と飯島に挑戦的な視線を向けた後、タブレットを諒太に差し出した。

すると、諒太の表情がすっと強張った。