冷徹御曹司のお気に召すまま~旦那様は本当はいつだって若奥様を甘やかしたい~

飯島がすっと彩実の前に立ち、相変わらずの朗らかな声で突然現れた女性に声をかけた。

彩実は飯島の背にそっと体を隠し、ちらりと三橋を見た。

百七十センチ以上はありそうな長身は、諒太と並んでもバランスがよく、美男美女でお似合いだ。

三橋は飯島を見ようともせず、手にしていたタブレットの画面に視線を落としたまま煩わしそうに口を開いた。

「ああ、飯島さんも遅くまでお疲れ様。仕事熱心なのはいいけれど、長時間副社長に付き合っていただいてまで衣装合わせをする必要があるのかしら。お嬢様のご機嫌をとるのも結構だけど、副社長にはそんなつまらないことにかまっている時間はないのよ。ちゃんと考えてもらわないと困るんだけど」

明らかにバカにしているとわかる声に、彩実はピクリと体を震わせた。

「それに、ただでさえブライダルサロンの予約が詰まっているのに、時間外だとはいえお嬢様の衣装合わせのために貸し切りにするなんて。どうせ飯島さんが言い出したんでしょうけど、明日の予約のお客様のための準備もしなければならないのだから、効率というものを考えてちょうだい」

そう言ってピシャリと飯島を叱りつけながらも、三橋の視線は飯島の背後にいる彩実に向けられている。

いらだちが混じるその荒々しい声に、彩実の胸にむくむくと怒りが湧いてくる。

お嬢様という言葉に彩実を揶揄する意思を感じる。

彩実は次第に膨らんでいく怒りを鎮めるように両手をぐっと握りしめた。

つい反論しそうになるが、事を荒立ててはいけないと、我慢する。

そのとき、目の前の飯島からくすりという笑い声が聞こえた。