冷徹御曹司のお気に召すまま~旦那様は本当はいつだって若奥様を甘やかしたい~

それにしても、目の前のふたりからまっすぐ見つめられ、居心地が悪い。

これで試着が終わりなら、早くこのドレスを脱いで私服に着替えたい。

普段着ることのないミニ丈のドレスから伸びた素足は、少しサイズが大きめのハイヒールを履いて不安定で、恥ずかしいのだ。

「副社長、これほど奥様に似合うドレスを一発で選ぶなんてさすがです」

一応参考までにと言いながらタブレットで彩実のドレス姿を撮りながら、飯島が感心するようにつぶやいている。

「奥様……」

その響きに、彩実は頬を赤くする。

ここにきてようやく自分が奥様になるのだと実感した。

予定通りにすすめば、あと三カ月で正真正銘諒太の奥様になり、白石家の一員として生きていくことになる。

ドレスを着ているせいか、その事実が今までになく彩実の心に広がっていく。

そっと目を上げると、腕を組み、彩実を眺めている諒太と目が合った。

彫刻のように無機質に見える顔は相変わらず感情が見えないが、一度笑顔を見せられたせいで欲が芽生えたのか、つい、同じ表情を探してしまう。

そのとき、ドアをノックする音が響き、すっとドアが開いた。

「失礼します……。あら、まだ試着が終わってないんですね。やっぱり甘やかされたお嬢様はあれこれ要望が多くて大変なんですね」

鋭い声でそう言いながら部屋に入ってきたのは、ホテルの制服を着た長身で綺麗な女性だった。

遅い時間だというのにメイクは崩れていなくて美しく、低い位置でまとめたシニヨンからは髪の毛一本飛び出さず、きっちりとまとめられている。

奥二重の目と力強い眉からは自信のようなものが感じられ、まだなにも話していないというのに、視線を向けられただけで、彩実は彼女に圧倒されそうになった。

「三橋さん、お疲れ様です。わざわざサロンにいらっしゃるなんて珍しいですね」