冷徹御曹司のお気に召すまま~旦那様は本当はいつだって若奥様を甘やかしたい~

ほんの一瞬諒太の顔に浮かんだ笑みは、たしかに彩実に向けられていた。

目を優しく細め、口角が少し上がっただけだが、これまでとことん厳しい顔ばかりを見せられていた彩実にとっては極上の笑顔。

瞬間、息をのむほどだった。

「さ、とにかくこのドレスを試着しましょう。ということで、副社長はしばらく外でお待ちくださいね」

黙り込む彩実を見た飯島は、彩実がお色直しについて納得したと勘違いし、諒太を部屋から出した。

「このパープルのドレスも、きっとお似合いです。さあ、試着しましょうねー。あ、ドレスはすべて副社長が買い取るそうですから、サイズ直しはもちろん、自由にアレンジを加えられますのでおっしゃってください。胸元のパールを増量というのもありですよ」

飯島の瞳がきらりと光り、その言葉に彼女の本気を感じた彩実は、もう従うしかないと、覚悟を決めた。

幸いなことに、諒太が言ったとおりカラードレスの試着は一度で済んだ。

諒太が選んだパープルのAラインのドレスはひざ丈のミニで、肩から袖はレースで覆われ、スカート部分はオーガンジーを何層も重ねてボリュームを作った可愛らしいデザインだった。

小粒のパールが全体にちりばめられていて、動くたびに落としそうで、彩実はドキドキした。

「まるでバレリーナみたいです。あ、どうせなら靴はバレエシューズをモチーフにして特注しましょう。手袋は同じ色のレースで、できれば綺麗な栗色の髪はまっすぐにおろしたいけど、それはメイクさんとも相談ですね」

ミニのドレスを着た彩実を見ながら、飯島がぶつぶつ言っている。

その隣で諒太も彩実の姿を見つめている。

諒太自身が選んだドレスを着ているからだろうか、幾分表情は柔らかく、感想を口にするわけではないが、気に入らないわけではなそうで、彩実はホッとしていた。