冷徹御曹司のお気に召すまま~旦那様は本当はいつだって若奥様を甘やかしたい~

彩実はフランスのデザイナーのドレスだというのも縁を感じてうれしいが、なにより諒太がこのドレスを気に入ってくれたのがうれしく、口元を緩めた。

すると、それまでふたりのかたわらで彩実の様子を心配そうに見ていた飯島が嬉々とした表情で彩実の顔を覗き込んだ。

「如月様、ようやくこれでウェディングドレスが決まりましたね。お疲れ様でした」

「はい。ありがとうございました。飯島さんもお疲れですよね」

時計を見れば二時間近くかかっている。

笑顔を絶やさず彩実につきあってくれたが、飯島も疲れているだろう。

彩実が訪れたとき、サロンには客らしきひとはひとりもいなかった。

きっと彩実が最後の客に違いない。

「あ、じゃあ、すぐに着替えますね。遅くまでつきあっていただいてすみません」

時間外労働を強いているのかもしれないと焦った彩実は、スカートの裾を両手で持ち上げ、諒太の腕の中からそっと抜け出した。

簡単に離れることができてホッとする反面、寂しさも少し感じた。

「えっと……私の着替えは? それに」

諒太がここにいては着替えられないと気づき、彩実は視線を上げた。

けれど、諒太が出ていく気配はなく、何故かラックにかかっているドレスを真剣に見ている。

「あの、諒太さん……?」

「君には淡いパープルが似合いそうだな」

「パープルって、あの……」

「如月様、ウェディングドレスも決まったことですから、続いてカラードレスの試着も楽しみましょう」

飯島の甲高い声が部屋に響き、彩実はハッと振り返った。

「え、まさか、今から?」

「そうですよ。こういうのは一気に選ぶのが大切なんです。それに、ほら、副社長がいくつか選んでくれてますから、順番に着てみましょう」

「選んでくれてるって……嘘っ」

飯島が足早に向かった先では、諒太がラックからドレスを次々と取り出していた。