冷徹御曹司のお気に召すまま~旦那様は本当はいつだって若奥様を甘やかしたい~

「副社長、スマホの準備はいいですか? 今までのドレスも似合ってらっしゃいましたけど、今回はまさしくプリンセス。抱きしめたくなるほど美しいですよね」

夢見るような目で彩実を見つめながら弾む声をあげる飯島のせいで、彩実は恥ずかしくて頬を染めた。

「プリンセスなんて、言い過ぎです……」

彩実は照れて小声でつぶやいた。

「いーえ。言い過ぎなんかじゃありません。本当に綺麗なんですよ。私が担当させていただいた新婦様の中でも間違いなく一番美しい花嫁様になりますから、絶対このドレスにしましょう」

「は……はい」

押し切られるようにうなずいた彩実に、飯島は満足げに笑うと、しゃがみ込み彩実の足元に広がっているロングトレーンのしわを伸ばし、綺麗に整えた。

「このドレスだと、ブーケはどんなデザインがいいでしょうねー。ティアラはあまり派手でないのがいいかな……副社長はどう思いますか?」

飯島の問いに、諒太はなにも答えない。

「副社長?」

無言で彩実を見つめる諒太に、飯島は彩実と顔を見合わせ肩をすくめた。

彩実もショックを隠し切れない表情を浮かべ、力なくその場に立ち尽くした。

やはりこのドレスも諒太を納得させられなかったようだ。

彩実がどれだけ自分に似合うと思っても、単なる自己満足にすぎないのかもしれない。

諒太にしてみれば、これまでのドレスとも変わらず、大差ないのだろう。

彩実は目の前の鏡に再び視線を戻した。

華奢な肩が露わに見え、その弱々しさに切なくなった。

なにを着ても諒太に認めてもらえず、いたたまれなさに泣きそうになるが、この程度のことで涙を流していてはだめだと自分を叱咤する。

決して彩実を認めようとしない男性と結婚するのだ、このさきにはもっと切ない出来事が待っているはずだ。

ここで悲しんでいる場合ではない。