冷徹御曹司のお気に召すまま~旦那様は本当はいつだって若奥様を甘やかしたい~

「ですよねー。私もこれが一番いいと思います。これなら副社長も納得するはずですから、早速呼んできますね」

「あ、あの……」

彩実は部屋を出て行こうとする飯島を止めるが間に合わず、彼女はあっという間に部屋を飛び出していった。

よっぽど諒太に彩実のドレス姿を見せたいようだ。

「このドレスでがっかりされたら、さすがに落ち込む……」

彩実は鏡の前で肩を落とした。

これまで何着ものドレスを試着し、そのたび飯島に呼ばれた諒太が彩実のドレス姿を確認するのだが、毎回複雑そうな表情で首をかしげただけ。

結局無言のまま部屋を出ていくという繰り返しだった。

めげない飯島はすぐに「次にいきましょう」と気合を入れ直し、別のドレスを手にするのだが、彩実は次第に心身ともに疲れ、諒太は彩実がどれほど素敵なドレスを着ても納得しないのではないかと思い始めていた。

まさかとは思うが、無理矢理彩実と結婚させられることに腹を立て、こうして彩実に意地の悪いことを繰り返してうっぷんを晴らしているのではないだろうかとまで考えるほど、彩実は疲れていた。

「どのドレスを着ても納得してくれないなら、もういいや、これに決めよう」

鏡の前でバックスタイルを確認すると、大胆に背中が開いていて大人っぽく、ウエストの切り替え部分の大きめのリボンのかわいらしさとのギャップに感心した。

真っ白なシルクがたっぷりと使われたロングトレーンをヒールで踏んだりしないよう注意しながら鏡の前でドレスを確認していると、飯島が戻ってきた。

もちろん、その後から諒太も部屋に入ってくる。

かれこれ一時間以上試着を繰り返している彩実も疲れているが、待たされている諒太も同様のようで、無表情なのは変わらないが、疲れが見え隠れしている。

やはりどんな反応を返されてもこのドレスにしようと彩実は決めた。