冷徹御曹司のお気に召すまま~旦那様は本当はいつだって若奥様を甘やかしたい~

賢一の直系の孫である晴香なら時間をかけてドレスや白無垢などを仕立てるだろうが、彩実に同じレベルを求めるわけがないのだ。

「いや、衣装ならなんでもいいんだ。うちで用意できる既製の衣装の中から選べば十分だ」

賢一が口にするであろう言葉を、そのまま諒太が冷静に口にし、彩実は「ほら、やっぱり」と心の中でつぶやいた。

諒太にとってこの結婚がどんな意味を持っているのか、彩実にははっきりとわからない。

けれど、彩実の衣装がなんでもいいのと同じように、諒太には結婚の行く末などどうでもいいのだろう。

わかっていたはずだが、彩実は胸に痛みを覚えた。



その後ブライダルサロンに連れてこられた彩実は、諒太とともにVIPルームに案内された。

グレーのカーペットが敷き詰められた広い部屋の三方にいくつものラックが並び、隙間なく衣装がかけられていた。

数えきれないほどの衣装を目の前に言葉を失った。

一面はすべて白いウェディングドレスが並び、残りの二面はカラードレスが綺麗なグラデーションを織りなしてかけられている。

「わあ……綺麗」

こんなにたくさんのウェディングドレスを実際に見るのは初めてだ。

彩実は引き寄せられるように白いドレスの海に近づいた。

手を伸ばせばドレスに触れることができるほどに近づき、食い入るように見つめる。

それぞれデザインも素材も違うが、レースの繊細さや丁寧に縫い付けられたパールの輝きに、思わず息をのんだ。

諒太から衣装合わせに来いと言われて以来夢も期待も持たず、サイズが合えばなんでもいいと思っていたが、いざ目の前にすると、華やかなドレスの魅力に目を奪われる。

「右からプリンセスライン、Aライン、マーメイドの順に並んでいます。如月様でしたらどのスタイルもお似合いになると思いますが、まずはプリンセスラインから試着なさいませんか?」