百八十センチの身長と、定期的にジムに通って鍛えているという綺麗に筋肉がついた体も相まって、学生時代の忍は女性からかなりもてた。

彩実と忍が通っていた大学には建築やデザインを専攻する学生が多く、将来はその道で生計を立てたいと考える者がほとんどだった。

そんな中、建築関連で多方面にわたり影響力を持つ如月ハウスの社長令嬢である彩実や、小関家具の後継者と目されている忍は学内でも有名だった。

とくにデザイナーの間では神と呼ばれ敬われている職人を多く抱えている小関家具への注目は相当なものだった。

有名家具店のイケメン御曹司。

それが忍の代名詞のようなもの。

「ギャップがあるのは忍君も同じだよね」

彩実はふふっと笑い、からかうようにそう言った。

端正な見た目のせいで女性からの注目は絶大で、寄ってくる女性は今も後を絶たないはずだ。

けれど、彼自身はそんな女性たちにはまったく興味を持たず、家業のことだけを考えている。

設計やデザインが好きで、それを生業にできる環境に生まれた幸運に感謝し、浮ついたところなどかけらもない。

そんな見た目とのギャップが忍の魅力でもある。

そして、二年間しか同じ大学で過ごせなかったが、彩実にとっては有名な一家に生まれて窮屈な思いをしながら生きている同士という、特別な相手だ。

卒業後、こうして仕事を通じた縁をつなぐことができてよかったと思っている。

「ギャップか……。いや、俺はどちらかといえば、これからは効率的に宣伝をしながら会社を大きくしていきたいんだけどな。もちろん、胸を張っておすすめできる商品ありきだけど、両方のバランスを取りながら、新しい小関家具を作っていくつもりだ。あ、これはおやじたちには内緒だぞ。のんびりとこっそりとすすめるつもりだからな」

「大丈夫。忍君ならいつの間にかやってのけそうで楽しみ」