木目調のライトブラウンが全体的に軽やかな印象を与え、モデルハウスの寝室のベージュの壁紙にも合っている。

「注文するときに足の高さを一センチ単位で変更できるから、部屋の雰囲気とか、収納を考えたときに柔軟に対応できるんだ」

誇らしげな忍に、彩実は苦笑する。

「それはいいね。だけど、そこまでの商品説明はモデルハウスではできないと思う。一応小関家具さんの商品カタログを準備して希望される方には渡すけど」

彩実は申し訳なさそうに答えた。

「それは期待してないから大丈夫。ついでに言うと、マットレスの寝心地が抜群なんだ。どうしてもこの寝具メーカーのマットレスを使いたくて根気よく通いつめて三年。ようやくうちの商品に使わせてもらえることになったんだ」

忍は商品カタログを見ながら、心底うれしそうに笑みを浮かべた。

「え、だけどそれだけ力が入った商品を、まず初めにモデルハウスで使わせてもらっていいの? 大々的にCMを流すとか、マスコミに発表するとか、しないの?」

彩実はふと不安になった。

三年もかけて商品化にこぎつけたベッドを、発売後ならまだしも、発売前にモデルハウスの展示品として使っていいのだろうか。

「なに言ってるんだよ。うちが宣伝に力を入れてないのは彩実もよく知ってるだろう? あのじいちゃんと父さんだぞ? 良質な商品は黙っていても売れるって未だに言い張ってる。まあ、うちで働く職人たちも同じような考えのひとばかりで、逆に世の中とのギャップを感じて新鮮だけどな」

忍は椅子の背に体を預け、ゆったりと笑った。

部屋に差し込む日光に照らされた顔は、ほとんどの女性が見惚れるような精悍な顔立ち。

意志が強そうな黒い瞳と形のいい唇。

少し上がり気味の眉とすっと通った鼻筋のバランスも抜群だ。