頬を紅潮させ、瞳をうるませている彩実を、諒太がもの言いたげな目で見つめ返す。
「そんな顔をして、あのときも私の恋人を奪ったの?」
晴香の鋭い声が響き、部屋の空気が一気に冷たいものに変わった。
「なに幸せそうな顔でキスしてるのよ。私の幸せを壊しておいて、どうしてよ」
忍の胸から体を起こした晴香が泣きそうな顔で叫んでいる。
「晴香さん、落ちついて」
「忍君はどうして彩実と仲良くできるの? 私がされたこと、知ってるんでしょう? なのにどうして。そんなに彩実がいいの? だけど、とにかく私は絶対に忍君と一緒にフランスに行くから。彩実のことだから結婚したって、こっそりフランスに忍君に会いに行くかもしれない。私は絶対についていくから」
「晴香さん……。そんな子どもみたいにごねないで」
彩実と諒太のキスを見て再び怒り出した晴香に、忍は苦笑した。
子どものように騒ぎ立てる晴香の背中を軽く叩き、落ち着くのを待っている。
どこまでも晴香を温かく見守る忍の姿を見て、彩実も覚悟を決めた。
事実を知った晴香がそれをどう受け止めるのかはわからないが、このまま隠し続けるのは難しい。
それに今は、忍という味方が晴香にはついている。
彩実は表情を引き締めるとすくっと立ち上がり、リビングの脇の小さなチェストの引き出しを開け、中からICレコーダーを取り出した。
そして、晴香と忍の足元に腰をおろし、ICレコーダーを操作した。
「姉さんが忍君と結婚してフランスに行きたいのなら、それなりに頑張ってもらわないと私は応援できない」
真面目な表情で話す彩実に、忍は首をかしげた。
「頑張るって、なにを?」
「フランス語」
忍の問いに彩実は即座に答えた。
そして、顔を真っ赤にして涙ぐんでいる晴香に向かって、淡々と言葉を続ける。
「姉さんのわがままでついていくだけならそれって忍君の迷惑になるだけ。自分の力でなんでもこなしている忍君が、私の親戚に頼れる部分はすべて頼ってでも勉強に集中したいって言い出すほど今回の留学には意味がある。だから、誰にも忍君を邪魔してほしくない。せめてひとりきりでもフランスで生活できるくらいフランス語を話せなきゃ、ついていってほしくないの」
「そんな顔をして、あのときも私の恋人を奪ったの?」
晴香の鋭い声が響き、部屋の空気が一気に冷たいものに変わった。
「なに幸せそうな顔でキスしてるのよ。私の幸せを壊しておいて、どうしてよ」
忍の胸から体を起こした晴香が泣きそうな顔で叫んでいる。
「晴香さん、落ちついて」
「忍君はどうして彩実と仲良くできるの? 私がされたこと、知ってるんでしょう? なのにどうして。そんなに彩実がいいの? だけど、とにかく私は絶対に忍君と一緒にフランスに行くから。彩実のことだから結婚したって、こっそりフランスに忍君に会いに行くかもしれない。私は絶対についていくから」
「晴香さん……。そんな子どもみたいにごねないで」
彩実と諒太のキスを見て再び怒り出した晴香に、忍は苦笑した。
子どものように騒ぎ立てる晴香の背中を軽く叩き、落ち着くのを待っている。
どこまでも晴香を温かく見守る忍の姿を見て、彩実も覚悟を決めた。
事実を知った晴香がそれをどう受け止めるのかはわからないが、このまま隠し続けるのは難しい。
それに今は、忍という味方が晴香にはついている。
彩実は表情を引き締めるとすくっと立ち上がり、リビングの脇の小さなチェストの引き出しを開け、中からICレコーダーを取り出した。
そして、晴香と忍の足元に腰をおろし、ICレコーダーを操作した。
「姉さんが忍君と結婚してフランスに行きたいのなら、それなりに頑張ってもらわないと私は応援できない」
真面目な表情で話す彩実に、忍は首をかしげた。
「頑張るって、なにを?」
「フランス語」
忍の問いに彩実は即座に答えた。
そして、顔を真っ赤にして涙ぐんでいる晴香に向かって、淡々と言葉を続ける。
「姉さんのわがままでついていくだけならそれって忍君の迷惑になるだけ。自分の力でなんでもこなしている忍君が、私の親戚に頼れる部分はすべて頼ってでも勉強に集中したいって言い出すほど今回の留学には意味がある。だから、誰にも忍君を邪魔してほしくない。せめてひとりきりでもフランスで生活できるくらいフランス語を話せなきゃ、ついていってほしくないの」

