冷徹御曹司のお気に召すまま~旦那様は本当はいつだって若奥様を甘やかしたい~

「あ、ごめんなさい。我が家のもめ事に、諒太さんまで巻き込んでしまいましたね」

「いや、それは構わない。むしろ、俺もちゃんと聞かせてほしい。晴香さんが彩実を嫌う理由は、いったいなんなんだ? それに、俺が彩実を誤解してるって、なんなんだ?」

感情を抑えているのがわかる諒太の低い声を聞いて、彩実の胸はちくりと痛んだ。

おまけにその顔はとても悲しそうで、普段の白石家の強気な御曹司というイメージとはまるで違う。

よっぽど晴香がぶちまけた本音にショックを受けたのだろう。

「諒太さんは、姉さんのことを気に入ってたから、そりゃ、ショックですよね」

諒太との縁談を彩実に押し付けたとまではっきり言われて、プライドもズタズタにされ、傷ついたに違いない。

おまけに忍と晴香の抱き合っている姿を目の当たりにして、いい気分ではないはずだ。

忍の言う通り、このまま黙っているのは誰にとってもよくないのかもしれない。

そう思って落ち込んだ彩実に、諒太が「ばかじゃないのか?」と言って額に軽くデコピンをした。

「いたいっ。なにするんですか、突然」

慌てて額に手を当てた彩実の腕を掴むと、諒太は呆れたようにがっくりと肩を落とした。

そして、彩実を抱き上げ膝の上に乗せると、互いの額をゴツンと合わせた。

「俺が今心配しているのはお前だ。もちろん見合いのときに晴香さんの言葉をうのみにしてした俺の浅はかさは認める。だけど俺は最初、見合いの相手は彩実だと思ってたんだ。それが行ってみたら晴香さんがいて……。いや、今はそれはいいんだ。とにかく隠してることを洗いざらい全部話せ」

「あ……でも」

少しでも顔を動かせば唇が重なりそうなほど近くに諒太の顔があり、彩実は顔を逸らした。

けれどそれを許さないとばかりに諒太の顔が追いかけて来たかと思うと。

「……んっ」

諒太の唇が彩実のそれに重なった。

彩実の体を包み込むように抱きしめ、離さない。

「や……」

諒太は呆然としている彩実の唇に強引に口づけ、何度か角度を変えてリップ音を部屋に響かせた後、最後に軽く唇の表面を吸って解放した。

「続きは今夜」

離れる瞬間のささやきに、彩実は反射的にうなずいた。

突然のキスに体中が熱い。

彩実は相変わらず目の前にある諒太の顔をぼんやりと見つめ、息を整える。