冷徹御曹司のお気に召すまま~旦那様は本当はいつだって若奥様を甘やかしたい~

落ち着かないせいか、手に力が入らず、キャップを開けることができない。

何度もトライするが、キャップは一ミリも動く気配がない。

「貸してみろ」

見かねた諒太がボトルを取りあげ、簡単にキャップを開けた。

「ありがとうございます。すみません」

彩実は諒太からボトルを受け取り、ひと口飲んでのどを潤した。

おかげで気持ちが落ち着いてきたが、それはきっと水の力だけではない。

「どうせなら、親戚ご自慢のワインのほうが良かったか?」

そう言って軽く笑った諒太の力、かもしれない……。



その後、披露宴はタイムテーブル通りに進み、無事にお開きを迎えた。

お色直しも無事にすべて完了し、パンフレットの写真撮影には飯島が常に彩実の近くに控え三橋の嫌みや面倒な注文から守り続けた。

諒太は相変わらず淡々と段取りに従い、招待客からの祝いの言葉にも無難に応え、彩実と距離を置くこともなかった。

だから、彩実は安心してしまったのだ。

諒太はこの結婚を受け入れたのであって、彩実を受け入れたわけではなかった。

彩実との結婚によって得られるメリットを計算し、それだけで結婚を決めたのだ。

だから、婚姻届を提出し、結婚式も終えた後、彩実とともに過ごす必要はない。

好きでもない女性と一緒にいなくてもいいのだ。

そんな簡単な事実に彩実が気づいたのは、すべてを終えて今江が運転する車でホテルから新居であるマンションに戻ってすぐのことだった。

「俺は今から出るから、寝てろ。明日もそのまま仕事でいつ戻るかわからないし、自由にしていていい。あ、自由とはいえ、晴香さんの恋人を奪うようなことは二度とするなよ」

諒太は苦々しい声でそう言って彩実の前にタブレットを差し出した。

「なに……?」

嫌な予感がしてこわごわとタブレットを受け取ると、画面にはふたりの披露宴の記事が載っていた。