冷徹御曹司のお気に召すまま~旦那様は本当はいつだって若奥様を甘やかしたい~

『え、本当? 昨日のベッドも寝心地がよくて気に入ってたんだけど』

フランス語を続ける忍に合わせ、彩実もフランス語で答えた。

『そうだな。ちょっと横になるとか言って、がっつり眠り込んだときには笑った』

『ふふっ。それは言わないで。疲れてたから、つい』

毎日の残業と結婚式の準備で寝不足だった彩実は、ついモデルハウスのベッドに横になり十分ほどだが寝入ってしまったのだ。

というより、忍が気を利かせて起こさずにいたのだが。

『新しいベッドの寝心地も確認しないとね』

『そうだな。俺がデザインした自信ありの新作だからな。昨日のベッドと違って高級ラインのひとつだしきっと気に入るはずだ。発売前だから公表していない情報もあるから、今はお楽しみにとしか言えないけど』

真面目な声音に変わった忍の言葉に、彩実は「ああ、そういうことか」と納得した。

新商品の情報を部外者に知られるわけにもいかず、忍はフランス語に切り替えたのだと気づいた。

『わかった。なるべく早めに寝心地を確認しに行くね』

忍がひとりで設計とデザインを担当したというベッドだ、彩実は楽しみでワクワクしてきた。

『白石ホテルの奥様になって忙しくて時間もないだろうけど、がっかりさせない自信はあるから』

彩実はこれまでになく自信に満ちた表情と言葉に驚いたが、最近の忍の目覚ましい活躍を考えれば当然かもしれない。

彩実と忍は顔を見合わせ、互いにしかわからない思いを交わすように、笑った。

「あの、ふたりでこそこそ訳の分からない言葉を使って失礼ですよ。副社長や私がいることを忘れてませんか? それとも新婦様はその男性となにか特別な関係なんでしょうか?」

フランス語で話す彩実と忍をぽかんと眺めていた三橋は、我に返ったように騒がしい声をあげ同意を求めるように諒太を見た。