冷徹御曹司のお気に召すまま~旦那様は本当はいつだって若奥様を甘やかしたい~

彩実を膝に置いた後もこれといって彩実を気遣う様子はなく、怒っているのだろうと落ち込んでいたが、今のひと言で気持ちは落ち着き、安心できた。

「そうですよ。新婦様がしっかりと歩いていればこんな大騒ぎにはならなかったはずです」

遠巻きにふたりの様子をうかがっていた三橋が、突然甲高い声をあげた。

「私は広報の人間で新婦様のお世話係ではありません。手を貸さなかったからと言って責められても困ります。新婦のお世話は飯島さんの仕事です」

さっき自分を責めた忍に納得できないのだろう、三橋が平然と言葉を続けた。

お客様相手の仕事に就いているというだけでなく、ひととしてだめだろうという言葉を胸を張って堂々と口にする三橋の姿に、彩実は目を丸くした。

忍も同じ思いなのか、束の間言葉を失った後、次第に怒りが込み上げてきたのか、顔が赤く染まっていく。

「おい、客を何だと思ってるんだ」

気色ばむ忍に慌てた彩実は、諒太の膝から降りると、忍の腕を掴んだ。

「忍君、落ち着いて。忍君のおかげで私はケガもしてないし、まだまだ続く披露宴もちゃんと楽しむから。それに。ほら、あの件はどうなったの? 私、昨夜は忍君を残して途中で帰っちゃったから、気になっていたんだけど」

彩実は忍の気持ちを落ち着かせようと、仕事の話を持ち出した。

昨日から続く商品の搬入など、気になっているのは嘘じゃないのだ。

すると、忍は気持ちを落ち着かせるように何度か息を吐き出すと。

『ベッドの件ならすべて完了』

突然フランス語で話し始めた。

もちろん彩実はフランス語が堪能で、母国語に近い感覚で使いこなしている。

近いうちに家具の勉強のためにフランスの学校に入学したいと考えている忍もフランス語を話せる。

「忍君?」

『取り替えたべッドだけど、壁紙の雰囲気にも合うし、彩実も気に入るはずだ』