冷徹御曹司のお気に召すまま~旦那様は本当はいつだって若奥様を甘やかしたい~

「え、小関さんが助けてくださったんですか? 絶対格好良かったですよね。私も見たかったです。階段から落ちるお姫様を助ける王子様って感じですか? やだ、本当に残念です」

忍に合わせるようにはしゃいだ声をあげた飯島に、彩実はくすくす笑った。

「たしかに忍くんは王子様のようで格好良かったかもしれないけど、怖くて目を閉じてたから、よく覚えてなくて」

それに、抱きとめられた一瞬、諒太が助けに来てくれたと勘違いした。

タイミングが悪ければ彩実だけでなく忍も巻き添えをくらって大けがをしていたかもしれないというのにと、忍に申し訳なく思う。

その諒太を見れば、彩実のエメラルドグリーンのドレスに合わせてオーダーしたという深緑のタキシードがよく似合っている。

憮然とした表情だが、やはり心配しているのか彩実の体を包み込むように優しく支えている。

彩実も諒太の膝の上で居心地のいい場所を見つけ、ゆったりと体を預けた。

「あ、お水かなにか持ってきますね」

飯島はすくっと立ち上がると、彩実の返事を待たずホールの向こうへ足早に消えていった。

「飯島さん、忙しいのに、申し訳ない……」

飯島の背を見送りながら、ぽつり、彩実はつぶやいた。

、飯島は常に彩実に付き添ってくれていたのだが、ほんの少しそばを離れてしまった間にこんなことになり、責任を感じているはずだ。

「私がもっと気を付ければよかった」

慌てずにゆっくりと会談を降りていれば、こんなことにはならなかったのにと、彩実は自分を責め、唇をかみしめた。

「やめろ。唇が傷つくぞ」

諒太の指先が、優しく彩実の唇を撫でた。

「小関君に助けられてせっかく無傷で済んだのに、自分で傷つけてどうする」

「え……は、はい。そうですね」

言い聞かせるような諒太の声に心を震わせ、彩実はこくこくとうなずいた。