冷徹御曹司のお気に召すまま~旦那様は本当はいつだって若奥様を甘やかしたい~

「そ、そう言われても、私は別に急かしていたわけでは……それに、階段をおりるくらいひとりでも」

「ひとりでもって、そんな言い訳通用すると思ってるのか?」

しどろもどろに弁解する三橋に、忍は容赦なく詰め寄る。

階段から落ちそうになる彩実を見て、よっぽどショックを受けたのだろう。

忍の顔色も悪く、動揺しているのがわかる。

「おい、どうしたんだ」

低い声が響き振り返ると、電話を終えた諒太が彩実のもとにつかつかとやってきた。

忍に抱き上げられている彩実を見て、顔をしかめている。

「なにかあったのか?」

諒太は不機嫌な声で彩実に問いかけると、睨むように目を細め、忍と三橋に交互に視線を向けた。

「あ、あの、大丈夫です。ただ、ちょっと私が階段から落ちそうになって」

気まずい雰囲気の中、おずおずと彩実が口を開いた。

「落ちた? 大丈夫なのか」

「大丈夫です。あの、落ちたのではなく、落ちそうになっただけです」

諒太に顔を覗き込まれ、彩実は慌てて目を逸らした。

諒太の表情を見ても、心配しているのか怒っているのかわからない。

おまけに階段から落ちかけた動揺もまだ残っていたのか、心臓もバクバク言っている。

「彩実さんっ。きゃー、どうしたんですか。まさか、疲れて倒れたんですか?」

「あ、飯島さん」

飯島は、最後の衣装直しで着るドレスに合わせて諒太が特注したルビーのネックレスがようやくホテルに届き、飯島が受け取りに行っていたのだ。

その間、彩実は螺旋階段での撮影をしていたのだが、もしも飯島が立ち会っていれば、彩実をひとりで階段から降りさせるようなことはしなかったはずだ。

「大丈夫ですか? パンフレットの撮影を何度もさせられたから、きっと疲れたんですよね」

「違うんです、あの、ちょっと階段でつまづいただけで」