冷徹御曹司のお気に召すまま~旦那様は本当はいつだって若奥様を甘やかしたい~

カメラマンのてきぱきとした声に、彩実はホッと息をついた。

白石ホテルのブライダルのパンフレットに使われる写真を、式や披露宴の合間に撮られている。

披露宴会場での写真はもちろん、ブライズルームでの様子も撮られたが、これほど多くの写真が必要なのかどうか、彩実には理解できない。

それでも、副社長である諒太自らもモデルとなってパンフレットに載るのだからいい写真を揃えたいのだろうと思い、彩実は気合を入れなおした。

エメラルドグリーンのドレスに着替え、涙で崩れたメイクを綺麗に整えた彩実は、華やかで美しい。

飯島から何度も綺麗だと言われているうちに、お世辞だと思いながらも気持ちは落ち着いてきた。

そのおかげでカメラに向かって自然な笑顔を作れるようになってきた。

お色直しのたびに写真を撮っていれば嫌でも慣れてきて、カメラマンの細かい指示にも的確に応えられるようになる。

彩実はそんな自分に、苦笑いを浮かべた。

「新婦様急いでいただけますか。会場への入場時刻まで余裕がありません」

「あ、はい。すみません」

撮影に立ち会っている三橋の声に、撮影が終わり螺旋階段に座っていた彩実はゆっくりと立ち上がった。

Aラインのドレスの裾が階段に綺麗に広がっていて、立ち上がるのにも慎重になる。

五センチほどのハイヒールでバランスを取りながら立つのはかなり大変で、彩実は手すりにつかまりながら、バランスをとった。

「お急ぎください。時間がおしていますし今の時間の日差しを使いたいんです」

「すみません。でも、裾を踏んでしまいそうで……」

階下から彩実を見上げている三橋のいら立つ声に彩実は慌て、両手でドレスの裾を持ち上げる。

手すりから手が離れて不安定だが、裾を踏むよりはましだろうと、一歩一歩降りていく。