冷徹御曹司のお気に召すまま~旦那様は本当はいつだって若奥様を甘やかしたい~

彩実はあと三回のお色直しどころかこの披露宴が今すぐ終わればいいのにと、思った。

そして、ひしめき合うテーブルの間をゆっくりと歩いている途中で、晴香と目が合った。

さっきまで周囲に見せていた笑顔はもうない。

明らかに彩実を嫌っているとわかる不機嫌な表情はいつもと変わらず、さらに彩実の胸は痛んだ。

諒太にしても晴香にしても、彩実を受け入れるつもりはないのだろう。

そう思った途端、晴香の目に涙が浮かんだ。

目の前が涙で揺らめき、足元がはっきり見えない。

彩実は転ばないよう、足元に力を入れ、一歩一歩ゆっくりと歩いた。

そんな彩実に構わず、諒太は飯島の後に続いてさっさと歩く。

少しの優しさも見せなくなった諒太に、ポロリ、涙がこぼれた。

「まあ、泣くほどうれしいのね」

「政略結婚だなんて、単なる照れ隠しだったんだわ。本当、幸せそうな花嫁さんだわ」

ぽろぽろ涙とこぼす彩実をうれし泣きしていると勘違いした言葉が耳に入り、彩実はうつむいた。

心が痛くてどうしようもない。

けれど、これもまた、現実だ。

彩実は足元のじゅうたんに小さな涙のシミが浮かぶのを見ながら、期待するのはやめよう、強くなろうと心の中で繰り返した。

結局、彩実を受け入れようとしない諒太とはずっとこのまま他人のような距離感で過ごしていくのだろうし、如月家を出た今、晴香と顔を合わせる機会は滅多にない。

姉妹として、家族として、再び心を寄せ合うこともないだろう。

彩実は頬を伝う涙を拭おうともせず、ようやくの思いで諒太の腕につかまりながら、あきらめの笑みを浮かべた。



「新婦さま、少し左に視線をください」

「あ、はい。こ、こうですか?」

「OKです。しばらくそのままで……。はい、いい写真が撮れました。あとは階段を降りていただいて、中庭で撮影させていただきます」