冷徹御曹司のお気に召すまま~旦那様は本当はいつだって若奥様を甘やかしたい~

「身内に日本人も増えたから、みんな日本語の勉強もしてるんですけど、なかなかなんです。だからみんなホッとしてると思います」

「いや、せっかくフランスでも有数のワイナリー、おまけに向こうの政界にも深いつながりを持つビリオネアと親戚になるんだ。これからのことを考えればこの程度のこと、なんでもない。それに、愛情のない政略結婚のメリットは、これくらいだから、いずれせいぜい利用させてもらうよ」

それまでの軽やかな表情と声から一変。

諒太は表情を硬くし、とがった口調で答える。

なにが気に入らないのか、彩実を見ようともしない。

水に濡れた彩実のドレスを拭き、テーブルにぶつかった体をとっさに支えてくれたのは、ほんのついさっきのことだ。

それなのに、あっという間に諒太の様子は変わってしまった。

その突然の変化に、彩実は戸惑いを隠せない。

「それに、さっき少し話したけど、親戚の中には王室に縁のあるひともいるらしいな。俺も日本ではそこそこの家に生まれたと思ってるけど、さすがに王室はないな。結婚相手は誰でもいいと思ってたけど、さっき飲んだワインと一緒だ。俺の結婚も当たりだったな」

「当たり……」

諒太の腕にしがみつきながら、彩実は足元から力が抜けるような気がした。

今日は朝から式も披露宴もタイムテーブルどおりすすみ、諒太も楽しんでいるように見えていたが、錯覚だったのだろうか。

会場からの割れんばかりの拍手の中、彩実と諒太はお色直しのために会場をゆっくりと歩いていく。

ふたりともそれに応えるように笑顔を作り、知り合いを見つけるたび軽く会釈する。

「お似合いだわ」

「美男美女で、羨ましい」

「幸せにね」

いくつもの祝いの言葉をかけられ、彩実は次第に落ち込んでいく。