駅員に頼み込み、休憩室のベッドをかりることができた。葵は俺の腕の中で眉間に深いシワを寄せて、苦しそうに息をしている。

顔には血の気がなく、唇は真っ青だ。

ベッドに横たわらせると、少し表情が和らいだような気がした。

「大丈夫か?」

そんなわけがないのに、そうでも言って葵からの返事を聞かないと落ち着かない。

葵からの返事はなく、苦しげに呻いているだけ。

ヤバいよな、これは。

どうすれば、いいんだよ……。

こんな経験は初めてで、妙に緊張した。

「スマホ……ちょーだい」

「スマホ?」

「わた、しの……カバンに入ってる。連絡、しなきゃ……」

必死に絞り出した声を拾い、そばにあった葵のスクールバッグの中を探る。

くそっ、手が震えてうまく探せない。

なんでこんなに焦ってんだよ。

落ち着け、俺。

あちこち開けながら、ようやくスマホを見つけた。

葵の手にスマホを握らせようとして、スクールバッグを一旦脇へとよける。

「ほら、スマホ」

「あり、がと……」

葵は無意識なのか左胸に手を当てながら浅く速い呼吸を繰り返している。