それにしても、話してみないとわからないことっていっぱいあるなぁ。

知ってるようでまだ知らない咲の顔が、きっと他にもたくさんある。

兄弟は?

どんな家に住んでるの?

友達だってたくさんいるよね。

今まで好きな人や彼女とか……いたことあるのかな。

どうして気になるんだろう、咲のことがこんなにも。

恋してるから?

好きだから?

わかってる……本当は自分の気持ちを。だけど認めたくない。

「葵、葵ってば」

「えっ?」

花菜に肩を叩かれハッとした。

「ボーッとしすぎだよ」

「ご、ごめん」

「そろそろ帰ろうかって言ってて」

「あ、うん」

いつの間にか時間が経っていた。心臓がバクバクする。それになんだか少し息切れも。

どうしてだろう、苦しい。

久しぶりにこれはヤバいかもしれない……。

ゆっくり帰ろう。そうすればきっと、大丈夫。

カフェを出てホームが反対側の花菜とは改札でバイバイした。

「電車の時間やばい。走ろうぜ!」

階段を一段上がるだけでも息が切れてツラい。

「はぁはぁ……」

発作の前兆は自分でもなんとなくわかる。まだ大丈夫だけど、これ以上無理をすると倒れるかもしれない。