きっと先生は私がなにも知らないと思っている。だからそんなことが言えるんだ。恋をしたって死んでしまうなら、意味ないじゃん。
なにを言われても卑屈になってしまう弱い心。私は恋なんてしない。ツラいだけだもん。
先生に言い返せず、私は頭を下げて診察室を出た。
平木がスーツの襟元を正しながら近づいてくる。
「では参りましょうか。とにかく何事もなくてよかったです」
「うん」
「まぁ、何事もなかったわけではないですが……お嬢様が恋だなんて……」
「だからちがうんだってば」
思わず苦笑してしまう。こういうところがあるから、なんだか憎めない。
死ぬってことがどういうことなのかは、まだよくわからない。でも、だからこそ怖いんだ。
いったい私はどうなっちゃうんだろう……。



