「お嬢様なのに初めてなの?」
黒田くんが目を丸くする。
「あは、そうなんだよね」
「そっか。なんかイメージが覆るな。神楽さんも、そのへんの普通の女の子なんだね」
「なに言ってんのよ、黒田。葵のこと特別視しすぎ」
「え、花菜ちゃん! それって嫉妬?」
「なわけないでしょ! バカ!」
「うわー、なんかめちゃくちゃ愛情感じるー! たまんねー!」
「はぁ?」
ふたりのコントみたいなやり取りに思わず笑ってしまった。
「あっちいってよ、ついてこないで」
「えー!」
スタスタと歩いていく花菜の後ろを黒田くんが追う。私の隣には咲が並んだ。
「黒田くんって底抜けに明るいね」
「あいつは昔からあんな感じ」
「一緒にいると楽しいよね。なんかいいなぁ」
「…………」
急に黙りこんだ咲にチラッと視線を送る。すると唇がへの字に曲げられた。
「気になってんの? あいつのこと」
なぜか身体ごとこっちを向いて、刺すような力強い目でそう聞かれた。



