一生に一度の「好き」を、全部きみに。


「頑固者」

嫌味たらしくなにを言っても平木は表情どころか眉ひとつ動かす気配もない。

「ところでお嬢様、今日は顔色が優れないようですが」

「大丈夫だよ」

「そうは見えませんが」

「なに言ってんの、全然平気だって」

平木を言いくるめて地元の駅までの送迎にしてもらった。

「くれぐれも走ったりしないでくださいね」

「わかってるって。いってきまーす!」

疑いの眼差しで見てくる平木をスルーして車を降りた。そして電車に乗って学校へ向かう。

「まったく、心配性なんだから」

はぁ、なんだか疲れたよ。

新しい生活に疲れがたまっているのかな。平木も毎日あんなだし。

十分ほど電車に揺られ、駅から学校までの道を歩く。そんなに遠くはなく、徒歩五分の距離だ。

「おい」

後ろから肩をポンッと叩かれた。ブレザーの下に黒いパーカーを羽織った咲がそこに立っていた。

「なんだ、咲か。ビックリした」

「さっきから足元がフラフラで危なかっしいんだよ」

心配そうに私を見つめるその瞳。

「具合い悪いのか?」

「ちがうよ、ちょっと寝不足でさ。歩きながら寝てた」

「はぁ……? バカかよ」

片眉を上げて、さぞかし変なものでも見るかのような表情。