「バカは余計です、バカは」

「バカにバカって言ってなにが悪いんだよ」

ムッ。

まともに相手をしてたらキリがない。私は再び大の字で転んで空を見上げた。

体育に出たくても出れないんだよ。

激しい運動はダメだから、いつも見学。

きっとそういうところでも友達を逃してると思う。

「教室では静かだよな、おまえ」

「またおまえって……!」

「はいはい、悪かったよ。葵」

咲も同じように足を伸ばし空を見上げている。

ゆったりとした空間が心地いい。

「咲も気づいたと思うけど、私、お嬢様なの」

「あー、そうみたいだな」

まったく興味がなさそうな声に、話している私の気も抜けてくる。

「そのせいか、入学初日からみんなに距離置かれてるんだよね。なに話せばいいかわかんないとか言われて」

「ふぅん、中身はただのバカなのにな」

「だからバカは余計だって!」

「ははっ」

「さ、咲が笑った……!」

それもものすごく自然に。

「そりゃ笑うだろ」

「も、もう一回!」

「え?」

「もう一回笑って! レアだから!」

咲はしばしキョトンとしていたけど、徐々に眉間にシワを寄せていった。

「面白くないのに笑えるかよ」

「なんだ、つまんないの」

プクッと頬を膨らませる。すると、咲の手が頬に伸びてきた。

ぷにっ。たとえるならそんな音。人差し指で頬を突かれた。

「なにするの」