(さく)くーん! こっち向いて〜!」

「ヤバい、ホントカッコいいんだけどっ!」

「今日出てるとか、知らなかった〜!」

「見れて超ラッキー!」

近くにいた派手な女の子たちが、誰のことかわからないメンバーの名前を呼んできゃあきゃあ盛り上がっている。

四人組のバンドのグループは、他に比べて音の質自体が全然ちがう。

さっきまでは、派手でうるさいだけの耳が痛くなるような音楽ばかりだったけれど、最初のイントロから流れるように自然にスッと音が入ってきた。

ギターにキーボードにベースにドラム。それぞれの持つ楽器の音が、どれもきれいで洗練されている。

ちゃんとそれぞれの役割を自覚して、主張しすぎることなく、心地よいハーモニーを奏でて、それでいて歌もうまい。

聴いていて、ゾワリと鳥肌が立った。

クラクラするほどの熱気と、彼らによって命を吹き込まれた音楽が全身に痛いほどぶつかってくる。

心が震えて、ジーンとする。感動。この気持ちに名前をつけるのなら、きっとそれ以外にありえない。

「ギターボーカルカッコよすぎ〜!」

「歌声ヤバいわ。惚れる……!」

「咲くーん!」