先生の目が切なげに伏せられた。

「あなたはそれを承知で私に会いにきているのよね。それもわかってる。だけど、ごめんなさい。葵ちゃんからも口止めされているの」

「え?」

「あなたが会いにきても、なにも言わないでってね。鳳くんのことを想ってのことだと思う。いつまでも自分に囚われないで、幸せになってほしいと願ってるのよ」

「……っ」

そんな、まさか葵が……。

俺が先生の元にくるのを予測して釘を刺していたなんて。

葵……なんで。

「もう忘れなさい。葵ちゃんのことを想うなら、それが一番よ」

そう言われて忘れられるなら、とっくにそうしてる。

忘れられないから、こうやってきてるんだ。

ずっしりと鉛のように重い心を抱えたまま帰宅する。そして何気なくSNSを開いた。

ちがうって何度も自分に言い聞かせた。それでも気になって、Aのアカウントをちらちら覗く毎日。

自分からの発信はなにもなく、ただ俺の動画に対して反応しているだけ。

なぁ、お前は葵なの……?

ちがったらちがったで謝れば済む話だ。

俺は個人メッセージをやり取りするボタンを無意識に押していた。