俺はあいつの力になれていたのか。なにか他にもっとできることがあったんじゃないか。

葵の苦しみや恐怖や不安を、もっと理解できたら行動が変わっていたのかもしれないが、高校生の俺には限界があった。

葵のためになにかしたい。その思いは日に日に強くなり、俺なりに出した答えが医者になることだった。

付け焼き刃ではない本格的な医学を学べば、葵の気持ちが少しはわかるんじゃないか。

離ればなれになったあいつのためにできることがあるとすれば、情けないけどそれしかなかった。

『二十歳まで生きられない』

アメリカは日本よりもかなり医療が進んでいるので、葵は絶対に助かっている。

あんなに必死に生きようとしていたんだから、助からないはずがない。

死ぬわけ……ないだろ。

「葵ちゃん、未だに連絡つかないんだろ?」

「…………」

「スマホも替えて、俺らとの連絡一切断って……今頃、アメリカでなにやってんのかな」

翔は葵の病気のことを知っている。重度であることは伝えてないけど、アメリカまで行って治療を受けてると聞けばただ事ではないと思うはず。