四年後──。

『さてさて、今日のゲストはSNSで人気沸騰中の現役大学生鳳咲くんですー! イェーイ、よろしくねー!』

『今日はお招きいただき、ありがとうございます』

『現役医大生なんだよね? 頭もいいなんて、すごいなぁ』

『そんなことないですよ』

ひとり暮らしの狭い部屋で、大音量の音が響いた。

あははと爽やかに笑う自分がスマホの画面の中にいる。高校生の頃とはちがい、中身も対応も若干だが大人になった。

「いやぁ、マジで有名になったよな」

「大げさすぎ。人気チューバーのチャンネルに出演しただけだろ。俺自身はまだまだだ」

「謙虚だね〜! 昔はそんなヤツじゃなかったのに」

大学生になった翔が皮肉っぽくそう口にする。翔は今、俺と同じ大学の教育学部に通う学生だ。

失笑で返して、参考書に目をやった。

『拡張型心筋症は……』

医学部を受験すると決めたのは、葵がアメリカに発ってすぐのことだった。

もちろん簡単ではなかったし、決めてからは親に頼んで塾に行かせてもらい、休みの日も返上して勉強に費やした。

あのとき葵がどれほどの恐怖と闘っていたのかは、今でもわからない。

そばにいることしかできなかった自分を歯がゆく思い、なにもできなかったことが心底悔しかった。