「お前ら余計なこと言いすぎ。他に気の利いたこと言えないのかよ」
「気の利いたこと、ね」
「あ! こいつ、葉月にここぞとばかりに絡まれてるけど、全部スルーして葵ちゃん一筋だから安心してね」
「あー、そうそう! 女子に言い寄られても、面白いくらい全部スルー!」
女子に、言い寄られてる……。
そっか、そうだよ。咲はモテるもんね。
ズーンと気分が沈んでいく。
「おい、余計なこと言いすぎだって。ほら、そろそろ帰れよ。俺らの時間を邪魔すんな」
「えー!」
咲には咲の世界があって、もうそれは私の知ってる世界じゃないんだね……。
同じ世界を共有できなくなったのはすごく寂しい。
葉月さんと並ぶ咲の姿を想像したらモヤモヤした。
「気にすんなよ、あいつらが言ったこと」
静かになった病室で咲が私の顔を食い入るように見つめた。
「うん。でも、私なら大丈夫だからね」
「なにが?」
「もし……他に気になる人ができたら、ちゃんと言ってね」
「は……?」
途端に色をなくしたように低くなった声。
「だから、私なら大丈夫って話」
「なんだ、それ。できるわけないだろ」
「大丈夫だよ。ちゃんと言ってくれなきゃ、わからないし。それくらいで倒れたりしないからさ」
「そういう意味じゃなくて、葵以外のヤツを好きになったりしないって話だよ」
そんなにまっすぐな目で見ないで。



