「うっ」
急に痛みが襲ってきて、とっさに左胸を押さえた。
「葵!?」
「う、あ、胸が……」
「大丈夫か!? な、ナースコール!」
咲が勢いよく立ち上がりパイプ椅子がガタッと音を立てる。
いつの間にかコールしてくれたらしく、バタバタと慌ただしく数人の看護師がきて対処してくれた。
薬を飲んで少し眠ると、痛みは落ち着いていた。
目が覚めたら夕方で、あたりはオレンジ色に染まっている。
「咲……まだ、いてくれたんだ?」
私の手を握りながら、ベッドの上に伏せて規則正しい寝息を立てる姿に頬がゆるんだ。
寝顔、初めて見た……。
まつ毛が長くて、目を閉じていても咲の魅力は衰えないどころかますますカッコよく見える。
「咲……私、これから、どうなるんだろう。いつ終わりがくるの?」
長いトンネルの中にいるみたいだよ。
「信じてるけど……不安でいっぱいだよ……でも、今死んでも後悔はない、かな」
温かい咲の手を握りしめながら薄く息を吐き出す。
この温もりを忘れたくはないけど、これさえあれば大丈夫だって気にもさせられる。不思議だね。
あれだけ怖くてたまらなかったのに。ううん、今でも怖くてたまらないけど。
「これ以上、咲を……苦しめたくないよ……っ」
ポタッと涙の雫が頬に流れた。



