一生に一度の「好き」を、全部きみに。


ふたりの姿、見ていたくないな。

顔をそらして机に伏せる。

「葵」

突然肩を叩かれた。

考えなくても声でわかる。

「大丈夫か?」

「おはよう。大丈夫だよ」

そっと見上げた咲の顔には安堵の色が浮かんでいる。昨日はとても心配させちゃったし、今日だって食い入るように私を見つめて咲は心配ばっかりだね。

これからも、こんな顔ばっかりさせちゃうのかな。あんまり弱いところは見せたくない。

そんなに困った顔しないでよ。

とんでもなく重病人みたいじゃん。

って、そうなのか。私は重病人だ。

自分で認めるのは嫌だった。あくまでも『普通』でいたかった。

「大丈夫だから、そんな顔しないで」

咲の腕をバシッと叩いて、笑顔を浮かべる。

今日はすごく調子がいいの。

「本当に心配性なんだから」

何事もないフリをしながら笑うと、咲の顔がフッとゆるんだ。

「顔色もいいみたいだな。よかった」

「うん」

チャイムが鳴ってみんなが席に戻っていく。

やがて授業が始まると教室内は静かになった。

はぁ、授業中はいいな。なにも考えなくてすむから。

信じてはいても、漠然とした不安は消えない。これからどうなるのかとか、この先どうするのかとか。ぐるぐるぐるぐる、巡ってる。

情けないよね、強くならなきゃって思うのに……。