「ちょっと神楽」
「あ、瀬尾さん。おはよう」
「のんきにおはようじゃないでしょ。あんたの彼氏、言い寄られてるじゃん」
「え、あー」
今しがた登校してきた瀬尾さんは、私の隣の席にスクバを置くとものすごい形相で振り返った。
「あーじゃなくて、奪われても知らないからね。まったく」
フンッとそっぽを向いてしまったけど、チラチラと葉月さんを気にしてる瀬尾さん。
こういうとこ、やっぱり憎めないなって思う。
「ありがとう……」
「バッカじゃないの。だいたい神楽はのほほんとしすぎなのよ」
「うん、自覚はある」
「あたしはね、あんただから身を引いたの。葉月に奪われるくらいなら、あたしが奪うからね」
「え、それは困る」
「だったらしっかりつかまえときなよ」
あれ?
これって励まされてる?
それとも宣戦布告?
心配してくれてるの?
どれにしてもうれしいや。
「もー、あはは! やだぁ、咲くんったらー!」
高らかな笑い声が響く。
葉月さんは咲の顔を至近距離から覗いてた。
それに気づいた咲は距離を取るけど、彼女はめげずに近づいていく。ふたりが並ぶととても絵になって、お似合いだ。
チクン。
なんだか胸が痛かった。



