大きくなってく咲の存在。咲がいない未来なんて考えられない。それなのに現実って残酷だ。

「……っう」

左胸が締めつけられる感覚がして、とっさに手で押さえた。立っていられないほどの激しい立ちくらみと、めまいがする。

ドサッ。

「葵! おい!」

床の上にうずくまり、胸をきつく押さえたままの格好で動けない。

「大丈夫か!?」

「い、いた……っ」

心臓が、ものすごく。

このまま止まっちゃうんじゃないかと思うほど。

息を吸うことができなくなって肩で呼吸する。そうこうしているうちに、意識が遠のき始めた。

「しっかりしろ、保健室に連れてってやるから!」

咲の声が耳元で聞こえる。

「葵、大丈夫だ。俺がいるからな」

咲……。

「しっかりしろ、大丈夫だから……っ」

そこからの記憶はなく、次に目が覚めたときはベッドの上だった。

うっすらと意識が戻ってくる感覚がして、ゆっくりと目を開ける。