隣で咲が椅子を引いたのが気配でわかった。
伏せたまま顔だけをそっちに向ける。
「さっきはごめんね……」
「いや、うん。でも、さすがにヘコむ」
あれ?
ヘコんでたの……?
私が拒んだから?
でも、だって、いきなりキスとか言うんだもん……。
「恥ずかしかっただけだよ。本気で嫌なわけないじゃん」
嫌なわけないよ。だって、好きなんだもん。
「咲にだったら、なにをされても嫌じゃないよ」
「……っ」
なぜか咲はそのあと大きく目を開けたまま固まった。
「おーい、咲? どうしたの?」
「お、お前が、変なこと言うからだろっ!」
「え?」
「俺にならなにされてもいいとか、時と場所を考えてから言え」
「時と場所? うん、わかった!」
「本当にわかってんのかよ?」
「うん?」
目を合わせていると、徐々に赤くなってく咲の顔。
かわいいって言ったら怒るから言わないけど、その代わりにクスクス笑ったら、咲は思いっきり不機嫌そうに唇を歪めた。
「わかってねーな、絶対」
ボソッとひとこと言ったあと、また大きなため息。
よくわからないけど、怒ってるわけじゃなさそう。
それにしても、あとどれくらい私の時間は続くんだろう。



